年越し

年越しは実家で過ごした。シェアハウスで過ごそうかとも思ったけど、年越しくらいは実家に帰ってこようと思った。

大晦日の昼間、渋谷のマークシティのスープストックで作業した後、知り合いの家で鍋を食べて、一本だけハイボールを飲んだ。最近は滅多に酒を飲んでいないので久しぶりだった。少し頭が痛くなった。多分2020年もほとんど酒を飲まない。飲みたくなることばかりだけど俺は飲まないだろう。そう決めたのだ。

常磐線で柏まで行き、柏で東部アーバンパークラインに乗り換える。去年の六月までは毎日こうして大学から帰っていたんだと考えると、なんだか不思議な気持ちになる。こうして毎日電車に乗って本当に帰っていたのだろうか。

四月には大学に戻ろうかな。ふと、そう思った。なんとなくだけど四月に復学しなかったら俺は大学を辞めてしまうような気がする。

いろんな人に大学は卒業した方がいいよと言われる。正直それはどうでもいいのだけど、なんとなく大学に戻りたくなった。

豊四季の友人の家で少しガキ使を見た後、母に「今から帰るからご飯よろしく、友達もいる」とメッセージを送った。

「今仕事から帰って来てご飯はないよ。外で食べて」

時刻は20時30分。大晦日も母は仕事をしていたらしい。

なんとなく母親と父親がたくさんのうまい飯を用意してくれて待っている食卓を思い描いていた。

家に帰ると、母は疲れた顔をしていた。聞くところによると18時間働いてきてクタクタらしい。母は魚屋さんでパートとして働いている。年末年始はかなり繁盛するらしく午前3時からその日の夜までみんな働くのだ。

そういえば一年前もそうだった。俺が友達の茅野の別荘で年越しパーティーをしている間、母親は働き詰めだったらしい。

父親に会おうとしたけど、いなかった。母に聞くと入院しているらしい。精神疾患で入院してるわけではないようで心底安心した。

二階の自分の部屋で友人二人と自分のAVのデビュー作を見ながら、下で母は寝ていた。俺は自分の女装作のAVを見ながら友人二人の前で射精した。2019年一番勢いよく射精して、俺も友達二人も馬鹿笑いしていた。射精寸前でちんこに力を込めて時間を止めると精子は勢いよく飛ぶ。映像の中の俺はそんなに勢いよく射精していなかった。あのシーンはあの日2回目の射精だったな。

冷静に考えて、本名でこんだけさらけ出してAVデビューしてしかもそれが女装ものだなんて、結構俺はやばい人間なんじゃないかという気にもなってくる。だけど俺は安心していて、どういうことかというと、俺は自分がやばいことをしているということを自覚しているということだ。AVの現場に行くと、正直本当にやばい人たちがいる。AVの現場に行くと如何に自分が普通な人間であるかを思い知らされる。そしてどこか安心するのだ。

たまに、自分で自分のことを抑えられなくなって、俺は頭がおかしいんじゃないかと思うことがあるけど、俺は割と正常な人間の部類だと思う。たぶんだけど。

元日、目を覚ますと、友達は皆帰っていた。起きると14時をすぎていてどうやらかなり寝ていたようだ。

友達から電話が来て、アウトレットに行くことになった。特にやることもなかったし、(いや、いつだってやることはたくさんあるのだけど)靴が欲しかったので行くことにした。

友達の車であみアウトレットに行った。満車だった。たくさんの家族連れが来ていた。年明けだからたくさん福袋が売っているのだろう。

ニューバランスの靴を買った。2020年は走るつもりだ。最近筋力と一緒に脂肪もたくさん付いて来ているのでやよい軒の米をお代わりするのをやめて、少し走ろうかなと思っている。ジムでだけど。

どの家族連れも楽しそうに買い物を楽しんでいた。そういえば俺は家族でアウトレットに来たことがない気がする。そんなことをふと思って悲しくなった。

みんなで買い物をした後は寿司屋に行って、そしてエニタイムで筋トレをして家に帰った。

母さんはもう寝ていた。ちょっとだけ起こして話を聞くとまた午前2時起きらしい。今から30分後だ。また仕事に出かけるのだ。

6月に家を追い出された時、俺は毎日さだまさしの案山子を聞いていた。毎日母は、「帰って来て」と俺にメッセージを送っていた。俺はそれを無視して好き放題に生きていた。「親とは価値観が合わないからもう一生帰らない」と意地を張って格好つけていたあの頃の俺を一発ぶん殴りたい。本当は帰りたかった。確かに毎日が刺激的であれはあれでよかったし、あの時期があったから俺は今たくさんの繫がりができて楽しく生きていられるんだけど、たくさん親のことを泣かせて困らせた。ちょっと遅めの反抗期だったのかもしれない。

後15分もすれば母は起きてくるだろう。そしたらちゃんと言おう。「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」って。父にもメッセージを入れておこう。